もっと生き生きさせたい...
ん?それには動物福祉が役立つかも!
まずは、飼育方法の異なるブタの様子を見て!
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ブタは人工的な環境下で数世代にもわたって飼育されてきましたが、機会を与えると典型的な巣作り行動を示します。このように、進化の過程で得られた行動は、本能的に維持されており、それらの行動を制限せずに飼育することで、欲求不満による異常を減らし、生き生きと活動させることができます。
動物福祉(アニマルウェルウェア:Animal Welfare)は長い歴史の中で、定義や解釈が変わってきている概念です。今後も時代とともに変化し続けていくと思います。語源的には動物(アニマル)が、望みに沿って(ウェル)、生活する(フェア)ことであり、飼育者の行為の結果が、動物の望みに沿った生活に貢献できたかという結果を重視する概念です。飼育者の在り方を重視する「動物愛護」とは、結果主義かどうかの点で大きく異なるといえます。
動物福祉が目指すべき結果を簡単に表現すると「飼育するうえで、肉体的な健康だけでなく、精神的な健康も良好な状態を維持する」ということと言えます。そのためには可能な限り苦痛を減らし、ポジティブな経験を増やすことが必要です。
日本で「健康」といえば、肉体的な健康をイメージする方が多かったと思います。動物においても血液検査をして異常がなければ、その動物は健康だというのは違和感のないことだと思います。しかし、動物の生態生理、認知能力などの研究が進むにつれて、痛みや葛藤、心理的な状態を科学的に判断できる材料が増えてきています。そのような中では、動物の健康を考えるうえで、精神的な健康も考慮すべき時代となっています。動物がどのような能力、欲求をもっていて、どのように感じているのか科学的に捉え、飼育方法の改善を図っていくことが現在の「動物福祉」といえます。
飼育動物と野生動物の大きな違いは、その環境を人間に大きく依存しているかどうかだと考えることができます。野生動物は、今置かれている環境が苦痛になれば、他の環境を自らの力で探しにいくことが出来ます。しかし、飼育動物は自らの力で、その環境から脱することは困難です。「飼育動物は、人間に大きく依存している。」ということを念頭に、飼育動物の苦痛を取り除けるのは飼育者だけであり、ポジティブな経験を与えられるのも飼育者だけであるという責任意識が、動物福祉には必要です。
飼育動物は「行動」についても制限されているということを念頭に、どのような行動が制限されているのか、どのような行動をとらせてあげるべきか、その行動をとらせるにはどのような環境が必要なのか、飼育者は動物の生態生理などを考慮しながら、飼育方法の改善を図っていかなければならないといえます。具体的には「エンリッチメント」がその一つです。動物園や水族館だけでなく、家畜や鶏などの産業動物においても様々なエンリッチメントが導入されています。